現在の日本のパソコンメーカーの製造状況について

NEC、富士通、東芝などと日本メーカーのパソコンがありますが、意外にその状態は変わってきていたので、まとめます。

NEC

2011年に合弁会社「レノボNECホールディングス」を設立し、NECは保有株式の一部を売却して出資比率をレノボ(66.6%)より低い33.4%に下げました。2024年10月以降は、法人向けPCの販売機能をNECパーソナルコンピュータへ移管し、NECはPC事業から事実上撤退しています。NECパーソナルコンピュータは「レノボNECホールディングス」の100%子会社です。

富士通

富士通は、PC事業をレノボおよび日本政策投資銀行(DBJ)との合弁会社「富士通クライアントコンピューティング(FCCL)」に譲渡しました。2017年の合意に基づき、2018年度第1四半期に株式の51%をレノボ、5%をDBJに譲渡し、富士通が44%となり、事業を移管しました。これにより、レノボがFCCLの支配株主となり、富士通はPC事業をグローバルで展開するためのレノボの規模と調達力を活用できる関係となりました。

東芝(Dynabook)

Dynabookの買収は、シャープが東芝のPC事業を段階的に取得したもので、2018年に東芝クライアントソリューション(TCS)の80.1%を買い取り、2019年にTCSが「Dynabook」に社名変更、そして2020年8月には残りの19.9%の株式も譲渡が完了し、完全にシャープの100%子会社となりました。

シャープ

シャープは、2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(フォックスコン)に買収されました。経営再建のために鴻海の傘下に入ることを決定し、鴻海は第三者割当増資を引き受け、約66%の株式を取得しました。これは日本の大手電機メーカーが外資に買収される初めての事例となりました。

ソニー(VAIO)

2014年(平成26年)7月1日に、ソニーが「VAIO」ブランドで展開していたパソコン事業を日本産業パートナーズ(JIP)に譲渡しました。その後、2024年1月に家電量販大手のノジマが、事業再建ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)から約93%の株式を取得して子会社化しました。これにより、VAIOブランドや事業、経営陣は維持されますが、ノジマグループの一員として、ノジマの法人顧客基盤や通信事業との連携による事業拡大が期待されています。

PCのメーカ別出荷ランキング

  1. NECレノボ(レノボ)
  2. 日本HP
  3. DELL
  4. 富士通クライアントコンピューティング(レノボ)
  5. dynabook(シャープ(鴻海))
  6. アップル
  7. その他

出典:「2024年暦年 国内パソコン出荷台数調査」(株)MM総研

どこのメーカーだと日本製?

NECレノボ(日本製)

日本で設計・開発されており、法人向けPCは山形県の「米沢事業場」で、一般向けPCは群馬県の「群馬事業場」で組み立てられています。しかし、中国のPCメーカーである Lenovo の傘下にある合弁会社が企画・開発・製造を行っているため、部品調達などでは中国のLenovoの影響を受けています

レノボ(一部日本製)

レノボのパソコンは主に中国で製造されていますが、2015年からはNECの技術と品質を活かし、日本国内(山形県米沢市)でもThinkPadの一部モデルが生産されており、「米沢生産モデル」として高品質な製品が提供されています。

日本HP(法人向けは日本製)

日本HPのパソコンは、日本国内(主に東京都日野市)で組み立て生産されるモデルと、中国など海外で生産されるモデルがあります。特にビジネス向けのノートPCやワークステーションは「MADE IN TOKYO」として東京で生産され、高い品質と短納期を実現していますが、個人向けやエントリーモデルは中国生産が中心です。 

DELL(中国製)

Dellのパソコンはアメリカの会社ですが、製造は主に中国で行われており、日本向け製品も中国の工場(廈門など)で生産されていますが、近年は東南アジア(ベトナム、タイなど)への生産移管や中国製部品の削減・停止を進めています。 

富士通クライアントコンピューティング(日本製)

富士通のパソコンは、主に島根県出雲市の「島根富士通」で製造されています。品質にこだわった「MADE IN JAPAN」モデルで、企画・開発から部品受入検査、最終組み立て、出荷試験まで、日本国内の一貫体制で行われています。 

Dynabook(中国製)

Dynabookパソコンは、主に中国の杭州(こうしゅう)工場で設計・製造されていますが、日本国内の工場でも品質検査や修理体制が整っており、日本製の信頼性を継承しています。

VAIO(ハイエンド、法人向けは日本製)

VAIOパソコンは、日本メーカーであるVAIO株式会社が、長野県安曇野市の本社工場で設計・製造・品質管理を行うメイド・イン・ジャパンが基本です。特にハイエンドモデルや法人向けモデルでは、徹底した品質チェックと国内部品の採用により「安曇野FINISH®」として高い品質を実現していますが、一部の廉価モデルなどでは中国で製造されるケースもあります。 

MCJ(だいたい日本製)

MCJグループの主要なパソコンブランドであるマウスコンピューターの製品は、基本的に日本国内(長野県飯山市など)で製造・組み立てされています。 

パソコン工房のオリジナルパソコンは、日本国内の工場で組み立て・生産されており、熟練したスキルと厳格な品質管理のもとで製造されています。部品は海外製が多いものの、最終的な組み立てと検査を国内で行うことで、高い信頼性と品質を保証しているのが特徴です。 

iiyama PC(イーヤマピーシー)は、主に【日本国内(長野県・島根県など)】で生産されていますが、一部モデルは海外(中国など)で生産される場合もあります。

サードウェーブ(だいたい日本製)

サードウェーブ(THIRDWAVE)のパソコンは、日本国内(神奈川県綾瀬市)の自社工場で組み立て・生産をメインに行っていますが、一部製品は海外で製造されています。日本発のBTOパソコンブランド「ドスパラ」で、高品質な国内生産と、カスタマイズ可能な柔軟性で知られています。

エプソン(日本製)

エプソンのパソコン(エプソンダイレクト製)は、主に日本(長野県安曇野市)の工場で組み立て・生産されていますが、基幹部品の一部や他社製品は海外(中国など)の工場で製造されている場合もあり、BTO(受注生産)モデルの信頼性確保と短納期を実現するために、国内の設計・生産体制を重視しているのが特徴です。

サポートはどうなの?

NEC(★★★)

ご購入日から1年間無料でチャット、電話サポートがご利用いただけます。
NEC製パソコン、NEC製周辺機器、NEC製ソフトウェアなどについて、設定方法や使い方に関するご質問にお答えします。

レノボ(★)

レノボ製品のサポートは、保証期間内であれば基本的に無償で受けられます。主な問い合わせ方法には、Webサイトからの検索、Webチャット、電話サポートがあります。 ただ、中国対応なので、あまり評判はよくありません。。

HP(★)

HPなんでも相談サービスは有料サービスです。他は基本セルフサービスです。

DELL(★)

製品の使い方や技術的なトラブルについて担当者に相談したい場合、通常、製品の保証期間内であればテクニカルサポートを無料で利用できます。保証期間内のサポート窓口(電話番号やチャットなど)は、テクニカル サポートに問い合わせるページから確認できます。 

富士通(★★★)

富士通パソコンの無料サポートは、購入後1年間は電話・チャットで操作方法などを無料で利用できます。(一部有料オプション除く)

Dynabook(★★)

電話サポート(dynabook あんしんサポート)
パソコンの一般的な操作方法や使い方に関する相談を無料で受け付けています。ご購入日より5年間は無料で利用できます(5年経過後は有料)。電話がつながらない低評価のコメントもあり。

VAIO(★★★)

VAIOの「使い方」に関する無料サポートは、製品の購入時期や製品登録の有無によって対応範囲が異なります。一般的に、購入から1年間は電話やメールでの使い方の相談を無料で受けられます。 

マウスコンピューター(★★)

マウスコンピューターのサポートは、購入後3年間(一部製品・購入時期による)は無償のセンドバック修理保証が標準で付いており、故障時は製品を送付(送料片道負担)して修理・返却してもらえます。使い方に関する質問は、公式WebサイトのFAQや電話サポート・チャットサポート(時間帯限定・内容により有料の場合あり)で相談可能です

エプソンダイレクト(★★)

エプソンダイレクトのサポートは、購入製品の1年保証期間内なら「引き取り修理」などが無料になり、チャットサポートやオンラインマニュアルは製品を問わず基本無料で利用可能。LINE公式アカウントでのチャットサポートも便利です。 PCなんでもホットラインは有料。

まとめ

海外メーカーは基本自分で大体できる方向けで、日本メーカーのNEC、富士通は、なにもわからない方が問い合わせしても丁寧に対応してくれる印象です。そのほかの日本メーカーも、その対応に準じている印象です。

なんで、HPやDELLは安定しているのに、NEC、富士通、Dynabookは身売りしなくちゃいけなかったの?

海外勢は「世界市場で稼ぐ力」を持っていたのに対し、NEC・富士通・Dynabookは「国内依存・高コスト体質」から抜け出せなかったという構造的な違いがありました。

時代強い企業儲けの源泉
1990〜2000初期日本勢(NEC富士通等)日本国内でのブランド・サポート
2005年以降海外勢(HP/Dell/Lenovo等)世界規模の生産効率化と調達能力

日本メーカーが苦しんだ理由

① 国内市場依存で小さすぎた

  • NEC・富士通・Dynabookの売上の大半は 日本のみ
  • 価格は高く維持 → でも 市場は縮小(スマホ時代へ)
  • 企業や自治体向けは残っていたが、量が足りずコストが落とせない

→ 世界で戦わず分母が小さいまま成長余地なし


② 高コスト体質(国内生産・手厚いサポート)

  • 工場は日本・人件費高い
  • 量が少ない→スケールメリットが出ない
  • 国内サポートが厚く固定費が重い

海外勢は中国・東南アジアで大量生産
部品調達力もケタ違い(Apple/HP/Dellは巨大契約)

同じ性能なら海外勢の方が安い


③ 独自規格路線で負けた

  • かつては 「独自の価値」が差別化要因だった
    例:PC-98、独自キーボード、国内企業向けカスタム
  • しかし Windows+Intelの標準化が進むと…

独自性が逆にコスト増・機動力下降につながった

国際標準のPCに対抗できなくなる


④PC以外を伸ばせなかった

  • HP:プリンタやサーバーで稼げる
  • Dell:企業サーバー・ストレージが主力
  • Lenovo:ThinkPadブランドで世界展開

一方国内勢は…

メーカー強い事業その影響
NEC公共・インフラ系そちらは利益出る→PCは後回し
富士通SI(システム構築)同上
Dynabook(東芝)半導体・白物家電PCが赤字でも助けられない局面へ

「身売り」するしかなかった理由

メーカー結論
NECLenovoに救われた →世界調達力で黒字化
富士通Lenovo傘下でコスト改善が目的
Dynabook東芝が経営危機 →鴻海(シャープ)に譲渡で延命

HP・Dellが安定している理由

項目HP・DellNEC・富士通・Dynabook
市場世界全域が主戦場国内中心(縮小市場)
生産中国・世界規模生産で安い日本・分散で高コスト
事業構造PC以外も太い柱ありPCが主力で苦しい
ブランド国際的に強い日本のみ強い
規模巨大(億台規模)小規模(数百万台)

Lenovo・鴻海傘下後に何が変わった?

観点変化の概要メリットデメリット
生産・調達中国での大量生産へ統合コスト低下→黒字化へ「純国産感」が薄れる
設計ThinkPad技術の共有耐久性アップ・薄型化一部モデルは個性低下
品質管理世界基準の検査工程導入初期不良が減少傾向国内サポートとのズレが発生
ラインアップ商品整理・統一化ムダな派生モデルを削減ラインが少し寂しく感じる
OS/BIOS/ツール国際標準へ法人用途との整合性UP独自機能は縮小